「転職後も今の年収を維持したい」なら、”今の年収”を正しく知ること

転職を考える際に、年収や給与は大事な条件の一つです。「年収の大幅アップまでは望まないが、今の年収レベルは維持したい」と考える人が大半でしょう。しかし、基準となる“今の年収”を正しく把握しているかどうかによって、応募先、転職先の選び方が違ってくるかもしれません。あなたは心当たりないですか?

 

年収や給与の金額は、応募先を選んだり内定の回答をするにあたっての判断材料になるのは当然ですし、人によっては転職理由そのものでもあります。やってみたい仕事があっても、給与が低くて生活が成り立たないのでは現実的ではありません。多くの人は特に意識しなくても、「今の年収以上の求人情報」だけを検討対象にしているのではないでしょうか。でもちょっと待ってください。その“今の年収”がいくらなのか、明快に答えられますか?トータルの金額だけでなく、「月々の給与と賞与の割合は?」「月々の給与に基本給が占める割合は?」といったバランスまで把握できているでしょうか?「直近の年収はだいたい○万円くらい」とか「給与口座の振込金額しか見ていない」という人は要注意です。応募先、転職先を正しく判断できていないかもしれません。

 

あらためて給与明細で確認しておきたいことは、基本給に加算されるものと天引きされるものです。
会社によって手当の制度や名称はいろいろですが、これらの項目が反映されて月々の給与を構成しています。

 

例えば、振込金額が同じ25万円でも、給与を構成する要素のバランスが違えば年間トータルの年収金額も、「転職先では年収○万円くらい欲しい」と想定する金額も、ずいぶん違ってくるはずです。給与明細と構成比をきちんと把握していないと転職活動にどんな影響があるのでしょう?

 

【case1】 Aさんの場合

 

Aさんは自分の給与明細をじっくり見たことがありません。面接で「今の年収はいくらですか?」と聞かれて、「(えーっと、毎月の振込金額が20万円くらい、ボーナスが20万円だから…)だいたい300万円弱です」とかなり大雑把な答え方をしています。Aさんの答えには天引きや控除の分がまったく考慮されていません。Aさんの実際の年収はもっと多いはずです。また、「だいたい〜」というアバウトな答え方をすると、面接官に「自分の給与を正確に把握していないとは雑な人だな」という印象を与えてしまいます。企業によっては、内定後に源泉徴収票の提出を求められます。そこに記載されているのが正確な年収なので、面接で言った金額とあまりにも乖離が大きいと「準備不足でいい加減な人」のレッテルを貼られてしまいます。

 

【case2】 Bさんの場合

 

Bさんの現職は営業です。普段から顧客との会食や出張が多く、その場は自分で支払って経費計上し、次月の給与で立て替え金として精算されます。立て替えた金額が大きければ振込金額が高額になります。これが特定の月だけのことでなく、ほぼ常態化しているので、給与明細を把握していないと、実際以上に自分の給与が高いと勘違いしてしまいます。転職活動で提示される年収金額に対しても、それが相場に合った金額であっても、「今より安い」と感じて検討外にしてしまう危険があります。

 

【case3】 Cさんの場合

 

毎月の残業時間が多いのでワーク・ライフ・バランスを求めて転職活動しています。現年収が400万円で、そのうち80万円が残業代です。残業時間の改善が見込めそうなある企業に内定し、320万円を提示されました。給与構成から考えれば現年収の維持レベルです。Cさんも頭では分かっていましたが、それでも大幅ダウンに感じられて内定を辞退してしまいました。「残業は減らしたい。でも、残業代込みの年収は維持したい」というのは矛盾です。給与水準の高い業界に転職するという手もありますが、そこではCさんは未経験者ですから、希望通りの金額を提示されることは難しいでしょう。転職で解決したいことの優先順位を意識して、ブレない判断をしたいものです。

 

「転職しても給与金額は維持したい」は多くの転職希望者に共通するホンネでしょう。しかし、正しい知識・情報がなければ正しい判断はできません。ご紹介した3つのケースのような大雑把な情報だけでは、良い求人に出会ってもみすみす機会を棒に振ってしまうかもしれません。ワーク・ライフ・バランスか年収維持か、未経験の仕事へのチャレンジか、自分の優先順位と照らして理想の仕事に出会う準備のために、さっそく給与明細を確認してみてください。